「病気の人も美味しく食べられる料理」を提供
目黒川のほど近く、小さな立て看板が目印の細い路地奥にある古民家。それが今回の憧れウーマン、青山有紀さんが代表を務めるカフェ、京おばんざいのお店「青家」。昼間は誰もが利用できるカフェ、夜は会員制のおばんざい屋として「病気の人も美味しく食べられる料理」という想いの基に営まれている。
青家では京都の農家で育てられた玄米や旬の京野菜など安心して口にできる食材を使い、「薬膳」の理論を取り入れ、内面から食べて元気になれる一品を丁寧に仕上げている。青山さんはお店の仕事と並行して現在、国立北京中医薬大学日本校に在学し、「薬膳」の勉強もしている。
「薬膳料理と聞いてどういうものを思い浮かべます?朝鮮人参やナツメやクコの実が入っている、苦い薬の味がする料理と思われる人も多いのではないでしょうか。私も始めはそう思っていました」
そう薬膳料理について語り始める青山さん。薬膳料理とは中医学(中国古代医学)の論理に基づき作られた料理のこと。大きく分けて「食療」という治療を目的としたものと、「食養」という健康維持や未病目的のため生薬を材料に取り入れ、普段食べている食材で作ることができる料理の2種類があるという。そして、青家で提供しているのは「食養」に基づく料理だ。
日本の豊富な水と野菜の美味しさを活かした薬膳料理を発信
青山さんの実家は1日1組限定の料亭。幼い頃からみずみずしい京野菜や自然の営みから生まれる食材を身近に感じられる食事と共に育った。そんな生まれながらの環境が今の青家をはじめるきっかけになったという。
「日本のよさは水の豊富さと、野菜の美味しさです。日本には四季があって、暑さ寒さのバランスから、豊かな食材が生まれています。季節にあった食材は美味しいし、栄養価も高い。そんなすばらしい食材と薬膳の理念を基に料理を考えれば、病気の人が食べても、健康な人が食べても同じように美味しく食べられる料理ができると感じていました。それを発信していくのが私の役目だと思い、このお店を始めたのです」
青家で提供している料理は「心身のバランスを整え、環境変化に負けない健康な体作り」を促すという。何もかもが慌しく変化し、ストレスを抱える人も多い昨今。まさに現代人が求めている料理と言ってもいいだろう。
料理を通して“気”を伝える
青家はよくある都会の洗練されたカフェやレストランとは全く違う。
青家で共に過ごすお客様とスタッフが1つの家族のようになれる、そんな雰囲気に溢れている。その理由の1つには、青家が会員制のお店ということがあるのかもしれない。「おばんざいは食べる人の顔を思い浮かべながら作るもの」という青山さんのあったかい想いから始まったシステムだ。
そしてもう1つの理由はなんといってもこの「落ち着く空間作り」だ。築40年以上の古民家を、青山さんとスタッフとでオープンできるまでに改築したのだそう。
「食事をする上でその場所の雰囲気はとっても大切。雰囲気は一緒に食べている人、ほかのお客様、また働いているスタッフなど全ての要素から作られます。だから、心地よい空間作りはお店の重要な役割なのです」
食べ物は消化するが、作った人の気持ちやその時の空気感は食べた人の中にずっと残っていくというのが青山さんの信念。
「食べ物はもちろん体を元気にしてくれますが、それはただ単に食べ物を食べたからという訳ではないのです。食べ物を通して『作った人』、『一緒に食事をしている人』、『自然の恵み』という“気”が体に浸透するから、元気になれると思うのです」
全ての食物には必ず意味がある
青山さんの活躍は幅広い。現在はウェブサイトや雑誌で「薬膳を通して、美味しく元気になれる食事」についての執筆活動をしたり、美容と薬膳の知識を活かしたスイーツやスープの開発を行ったりと新たなステップへと踏み出している。
健康的で美味しい食事を知り尽くしている青山さん。
毎日どんな食事をしているのかと聞いてみると「何でも食べますよ」とシンプルな答え。
「食べたいものを我慢するなんて体に悪いですよ。全ての食物には必ず意味があるのです。イタリアンにも行きますし、肉も食べます」
自分自身の体を知って、何でもバランスよく食べることが、心と体の幸せへと繋がるというのだ。
青山さんからあふれ出るあったかい雰囲気。そしてお客様、料理、一緒に働くスタッフへの優しさや心くばり。青家はそんな彼女の想いと愛情を全て感じられる空間だ。