バレエのことばかり考えていた幼少期。
宝塚に出会って人生が大きく変わった。
立ち上げ間もない頃から在籍するピラティスインストラクターの中野万知子さん。宝塚からピラティスのインストラクターへどのように転身を遂げたのか、そして二児の母として子育てと仕事をどのように両立させてきたのか女性としてのキャリアに迫ります。
中野さんが幼い頃抱いていた夢はバレリーナ。
中学まで必死になって取り組んでいたものの、バレエの道でプロを目指す厳しさにぶつかり、その後新体操の選手として活躍。しかし、劇場の華やかさや高揚感を忘れられず、やはり舞台に立ちたい・・・そう思っていた頃に宝塚歌劇団と出会ったという。
「歌、ダンス、演技、コスチューム、音楽、何をとっても華やかでとても衝撃的だったことを覚えています」という中野さん。衝撃はすぐに憧れとなり、高校二年生のときに一発受検で宝塚音楽学校に合格。大学まで行ってほしいという親の反対を押し切り、宝塚の道を歩み始めた。
「入学後は想像以上に厳しいレッスンの毎日でした。一年生の仕事は“お掃除”。舞台を踏める日はまだまだ先の話で、厳しい下積みに脱落していく同級生もいました。そんな中でも私が続けられたのは“どうしても舞台に立ちたい”“●●の役を演じたい”という強い目的があったからこそ。最初の一、二年は修行の日々でしたが、今となっては本当に良い思い出。仕事に対する考え方の根幹は宝塚で養われたと思います」
音楽学校を卒業し、ついに宝塚歌劇団としてデビューを遂げた中野さん。雪組 風見玲央として着々と実績を重ね、ラジオシティミュージックホールでのニューヨーク公演などに出演。ダンサーとして最も輝いていた27歳、憧れのニューヨーク公演への出演を機に退団を決意。ロンドンに留学し、歌・ダンス・バレエ・ピラティスを学んだという。当時、ピラティスを学んでいたのはインストラクターになることが目的ではなく、ひとりのダンサーとして。当時、ダンサーの間でピラティスは非常にポピュラーなもので、運動神経を大きく左右する体のバランスを正しくとるための重要なトレーニングだったという。
生徒さんの些細な変化が大きなやりがいに。
女性の美しさ、健康さを今後もサポートしていきたい。
2年間の留学生活を終え、帰国した中野さんは「普通の生活」を求め、知人のジュエリーショップでプレス・宣伝の仕事を5年間経験。公務員の旦那様と結婚をし、出産を機に退社。その後、旦那様の転勤に伴い、ベルギーで3年間の海外生活を経験する。中野さんがピラティスのインストラクターを志したきっかけは二人目のお子様を海外で出産したこと。自然分娩が当たり前の日本と比較して、ヨーロッパでは無痛分娩が常識。産婦人科医とキネシストと呼ばれる妊婦の心と体のケアをしれくれる専門家が二人一組となって出産前後の妊婦をサポートするという手厚いフォローがほぼ全ての妊婦に与えられていたのだ。更に驚いたのは出産直後に行われたキネシストによるマッサージおよびストレッチがピラティスであったこと。産後の骨盤トラブルも全くなく、体が戻るのも非常に早かったということから、ピラティスの意外な効果を知ることとなった。まず海外の妊娠・出産に対する考え方に感動し、“ピラティスを通じて得られるこの感動を日本の女性にも伝えたい”と子育てをしながらピラティスインストラクターの資格を取得した。
帰国後、子育てと両立させるために自宅をスタジオにし、産前産後の妊婦さんやダンサーの方をはじめ、一般の方にも広くプライベートレッスンを提供。そして週に2回、椿の坂スタジオでピラティスを教えている。とはいえ、小さなお子様を二人抱えながらの仕事の両立は容易ではないもの。何が彼女をそこまで動かしているのだろうか。
「ピラティスを初めてから肩こりがなくなった、気持ちが前向きになれた、週に1回の楽しみができた、など、些細なことではありますが、レッスンに足を運んでくれる生徒さんたちに少しでもプラスになることができたとき、この仕事をしていてよかったなぁと深く感じます」
そんな中野さんの仕事に対する姿勢は宝塚時代から変わらず仕事=プロであること。何があっても簡単には休めないこと、お金をいただいている以上、最高のパフォーマンスを提供することなど「仕事をすることに対する覚悟を決めることが重要。仕事も子育てもすべてを完璧にしようとするのではなく、子育てはできる範囲内で努力や工夫をする」というお言葉が非常に印象的だった。
次々と新しいことに興味を持ち、好奇心を仕事に変えて、様々なキャリアを積み重ねてきた中野さん。次なるキャリアとして「女性が元気で明るく美しくいられるもの」をピラティスを軸に構想中。現状維持ではなく、様々なものに好奇心をめぐらせ、前進していくその姿はパワーに溢れていて、同じ女性として憧れずにはいられないほど。中野さんのそんな前向きな思いとバイタリティが生徒さんを勇気づけ、高い人気を集めているのだと感じた。今後も中野さんの活躍から目が離せない。