健康ブームの中でも
無性にこってり料理を食べたくなる日もある
「ここ数年、健康志向、ダイエットブームがしばらく続いていて、低カロリーをアピールする商品が多かったんです。しかし、たまにはカロリーを気にせず、思いっきり食べたいと思う日もあるはず。普段は我慢しているからこそおもいっきり油っぽいものを食べたいという気持ちが誰にでもあるのではないかと考え、あえて油を主張する商品にしました」そう語るのは「あぶら部油そば」マーケティング担当の草間奈々子さん。
「あぶら部油そば」はこってり美味しい料理を紹介するレシピ本、「あぶら部」とのコラボレーション商品。食べ応えのあるこってりした「あぶら」の旨味を存分に楽しめるとコンビニを中心に販売され、大きな反響を得た話題の商品だ。
大学では食品に関わる研究を行い、将来は新商品の企画をやりたいと就職活動を行った草間さん。新卒入社でマーケティング部に配属され、今年で4年目を迎える。今までに企画し、発売した商品は20種類を超える。
「マーケティング部を希望していましたが、新卒で配属されたという事例がなかったので通ると思っていませんでした。入社後は商品を知るために3ヵ月間、開発部での研修を受け、その後はマーケティング部で先輩から業務を学びました」
生き残っていく商品は
年間1%未満という厳しい世界
サンヨー食品から発売される新商品はリニューアルを含め年間200種類近い。毎週1品以上は発売されている。新商品を好むユーザーのニーズに答えるため、業界全体で発売競争は激化している。そのため新商品が店頭に並び、姿を消すまでのサイクルがますます短くなっている。
「私は高価格帯と呼ばれる、だいたい200円前後するコンビニ向けのカップ麺を担当しています。コンビニには毎週、新商品がぞくぞくと入荷されます。商品はだいたい2週間で入れ替わっていきます。よほど売れても1ヵ月程。半年間生き残っていくのは1%もないくらいです。半年を費やして新商品を開発し、1ヵ月もしないうちに消えていく商品もたくさんあるんですよ。この厳しい競争に勝てる商品を開発するのが、私たちマーケティング担当の使命であり、夢でもあります」
“今”のお客様を知ることが新しい企画を生み出すヒント
少しでも生き残っていく商品を生み出すために、草間さんは日々試行錯誤している。ラーメンの食べ歩きや雑誌での情報収集、他社の発売したラーメンを試食するのはもちろん、コンビニやスーパーを何軒も巡ったりする。
「机にじっとして、企画を考えていても新しいアイデアは生まれません。流行っている商品を知るため、新商品に取り入れられそうな食材を見つけるためにスーパーやコンビニに行きますが、目的はそれだけではありません。1番大切なのは、商品を買ってくださるお客様を知ることだと思っています。スーパーで買い物をしている、コンビニでランチを購入している、そんな方々、一人ひとりが私のお客様です。その方たちがどういう方なのかを理解していなければ、必要とされている商品は分かりません。実際その場に行って、その方たちを見て、感じてこそ売れる商品を生み出せるのだと思っています」
油にとことんこだわった「あぶら部油そば」
草間さんが日々努力し、徹底したマーケティングをする中で生み出された商品の1つ、「あぶら部油そば」。これまでの健康ブームに飽きを感じ、世の中では「メガ」と名の付く商品が次々にヒット。そこで目をつけたのが、一冊のレシピ本「あぶら部」だった。
「あぶら部」は料理家の市瀬悦子氏が部長となり発足した部活動。健康に気づかいながらも、時にはこってりとしたものを楽しみたい大人のために「あぶらもの」を使った料理のおいしさや魅力を普及するために活動している。その活動の1つとして、発売されたのがレシピ本「あぶら部」。草間さんはインパクトのある本のタイトルやコンセプトに惹かれ、この企画を進めることにした。
「大々的に“油”を主張でき、商品名に“油”を用いることのできるラーメンを作れば話題性もあり、面白いと思いました。これまでは油をなるべく主張しないようにしてきましたから。また、今まで作ってきたラーメンはソースにこだわり、油はそれに付け加えるという方法でしたが、今回は逆の考え方。油が主要な役割を果たします。「あぶら部油そば」は他のラーメンの2倍近く油を入れているのに、種類と配合にこだわり、油の美味しさが味わえるラーメンになっています」
油そばは商品化されるまでに約半年を費やした。一般的に3ヵ月ほどで完成する商品が多いが、今回はレシピ本とのコラボ商品ということや、「油の美味しさ」をどこまで突き詰められるかを開発チームと徹底的に取り組み、仕上がりまでに少し時間がかかった。
「完成間近に、油の種類を変更したんです。最終的には鶏油という鶏の油を使用しました。ごま油よりもさっぱりしていて、鶏の風味が出るんです。入れる油の量を調整し、部長さんに確認していただき、また調整するという試行錯誤を繰り返していきました」
女性向けヒット商品を生み出す
カップ麺を食べるのは6対4で男性が多い。「人前でカップ麺は食べづらい」「カップ麺を買うのは抵抗がある」という女性の意見はいまだにあるとはいえ、忙しく働く女性が増えているので、需要も高まるのではないかと草間さんは考える。
草間さんはこれまでいくつかの女性向けカップ麺を発売した。「女性が考えた」シリーズはパッケージがピンク色のレース模様。具材にはコラーゲン入りの鶏だんごやハート型のかまぼこを使用し、かわいらしさや女性への細かい配慮を成された商品となった。あまりにも女性向けなため社内で商品化までにいくつかの壁を乗り越えなければならなかったが、購入したお客様からの評価は高かったという。
「“女性向け”、“健康へのこだわり”という観点からヒット商品を出すのが夢なんです。健康になりたいという人がカップ麺を選ぶのか、本当に女性向けカップ麺はニーズがあるのかなど、考えなければいけない課題はたくさんあると思いますが、どちらも社会的に話題性のある、ヒット商品を生み出せるキーワードです。今後リサーチをして可能性を生み出していきたいですね」
入社して4年経った今も、「ずっとやりたいと思っていた仕事なので、今はすごく楽しい。この仕事が大好き」と笑顔で話す草間さん。商品には、必ず企画者の想いが詰まっている。自分の仕事が大好きと語る彼女から生まれる商品はきっと消費者への愛情、商品へのこだわりが詰まっているだろう。今後も彼女が生み出す新商品に期待したい。