「手仕事」のこだわりを表現する
カラフルなテキスタイルやレザー、リボン・レースなどの装飾品、仕上がったバッグが所狭しと並んでいる。そこは今回の憧れウーマン、バッグデザイナー・シロヤマアケミさんのアトリエだ。決して広いとはいえないこの場所は、まるで彼女の大好きなものだけを集めた、宝箱のようだ。
シロヤマさんはテキスタイルの買い付けからバッグのデザイン、裁断、縫製、装飾、仕上げまで1点1点手作業で行っている。昨今、機械で大量生産される商品がほとんどだが、彼女は「手仕事」を何よりも大事にしている。
彼女のバッグはカラフルで細部にまで施された装飾のこだわりが特徴。そして、それが最も表現されているのが、バッグの内側だ。通常、バッグの内側はシンプルな色で、デザインもなく、ポケットだけが付いているものが多い。しかし、彼女の作るバッグは外側同様、内側も凝ってデザインされている。バッグ、ポケットの内側は複数のテキスタイルでおしゃれにデザインされ、ジッパーの金具にも工夫を凝らしている。まさに自分らしさを楽しみたいという女性にぴったりのバッグなのだ。
会社員からフリーへ。経験を活かして、自分のカラーを出したデザインを形に
シロヤマさんの「もの作り」歴は長い。アパレルメーカーでバッグや洋服のデザイン、生産過程に携わり、その後はスポーツメーカーで競泳用水着のデザイナーとして、グラフィックデザインを行ってきた。
「一般的にデザイナーというと、デザインをするのが仕事ですが、小さな会社にいる時には全ての行程に関わっていたんです。素材選び、デザイン、工場との生産調整や管理など・・・。そこで全ての行程を経験したことが、フリーになったとき、すごく役に立ちました。また、競泳用水着のデザインをやっているころは、規定の形の中ででいかに柄や色の組み合わせ、デザインのバリエーションを広げるかを身につけました。その色使いや柄の組み合わせは、今、私の作るバッグのデザインに活きていると思います」
企業デザイナーとしてキャリアを13年程積んだ後、現場のデザイン業務に加えて、管理職的な役割の仕事が増えてきた。常に「デザイン」、「もの作り」を生きがいにしてきたシロヤマさんは、「こういう働き方を続けてもいいのだろうか」と疑問を覚え、退社。いよいよフリーになる決意をしたのだ。
2004年、フリーになってからは、全ての行程を手作りで仕上げることはもちろん、ブランドのwebページ製作まで彼女自身で行ったという。
「フリーになってからは、会社のためでなく、自分のカラーを表現してデザインできるということがすごくうれしかったですね。バッグが完成したら、webにアップするという作業を繰り返していました。ちょうど半年ほど経ったとき、バッグの専門誌から取材依頼を受け、雑誌に取り上げてもらったのです。ここまで手作りでやっているということがめずらしかったのかもしれません(笑)」
デザインアイデアと素材は国境を超えてストックする
シロヤマさんは年に1度パリを訪れる。それは彼女にとって、年に1度のご褒美でもあり、そこでしか出会えないテキスタイル購入のためでもある。美意識を刺激するパリの街並み、人々、ファッションなど・・・その1つ1つが彼女の中に吸収され、将来、デザインとして開花する。
「パリに行った時はとにかく街を歩き回りますね。ショーウィンドー、街並み、空の色・・・。歩いていると、生活している東京では気が付かない発見や、アイデアが浮かんだり。パリの街はデザイン要素に満ちているので、私にとってはとても心地よい空間なんです」
2005年頃からは合同展示会に参加したりと、徐々に活動の幅を広げたが、決してビジネスを大きくするためにバッグを大量生産することはなかった。
「もちろんたくさんのセレクトショップで扱っていただき、多くの人の目に触れるようになればうれしいです。しかし、全国数十店舗へ毎シーズン新作を出すと、この品質のものは作れなくなります。全て『手作り』、『こだわりを表現する』ことを大切にしていきたいので、自分のバッグが似合う数店に置かせてもらえればよいなと考えています」
使う人のドキドキやワクワクを想像しながら作る
現在はブランド設立から6年を経て、ずいぶん販売方法も変わってきた。ものが売れないこの時代だからこそ、今年は直接お客様とコミュニケーションできる、フェアを行っている。
「2ヵ月に1度、新作を中心に展示するフェアをやっています。気に入って、リピートしてくださったり、お友達を連れ来てくださったりと周りの方々に支えられてやっています。フェアはバッグを見てもらうだけでなく、そこに集まる方々がゆっくりお話をしながら、リラックスしてもらえればよいなと思っています。今回はアロマセラピストを招きオイルマッサージも体験できるようにしたんですよ」
「Joolie」のブランドロゴマークにはフランス語、「なにかワクワク楽しいもの」というフレーズが刻まれている。それがシロヤマさんの作るバッグのテーマだ。そして、そんな「ワクワク楽しくなる」バッグを作るには、彼女自身が「どんなデザインにしようか?ここはどんな色を使おうか?とワクワク、ドキドキしながら作る」ということが最低条件だと話す。
最後にシロヤマさんにとって、「バッグ作りとは?」と尋ねてみた。
「デザインは私のライフワークです。『好きだからここまでやれるんだね』と言われることがあるのですが、好きなだけなら趣味でやっていたほうがずっといいと思っています。『デザインする』、『私らしいバッグを作る』ということは私の存在価値、私自身を表現するということなんです。こうやって手間と愛情を込めて作っているバッグだから『こんなに凝った、丁寧に作られたバッグを私は使っているんだ』と持つ人の自信と喜びになればいいなと思っています」